「私には、仏教語というものが語る世界を、そうじゃない言葉に移し替えたいという思いがあります。とくに『浄土三部経』が描く浄土のさまは、想像にしてはあまりに緻密なんですね。最近になって臨死体験との共通性が指摘され、浄土教の創始者たちもある種の臨死体験をしたのだと言われるようになりました」。
福島県三春町の福聚寺で、玄侑さんが語り始めた。十四世紀に創建されたこの古寺に生まれ、今は副住職。宗教はもちろん、心理学や物理学にも幅広い知識を持ち、人の「心」と「体」の密接な結びつきなど仏教が直接的に説いてきたことが、近年科学的にも証明されている事実を重視している。
「浄土教の説くアミターバという世界も、単なるつくりごとではなく、誰もが体験できる一つの状況ではないかと思って、この作品で書いてみました」。