
脳波の状態でいうと、アルファ波や、最近の研究ではシータ波も出ているとされる、その状態を“三昧”という。坐禅という姿勢そのものにひとりで挑むのは難しいが、そうした三昧の状態に、自分を持っていく方法はあると玄侑氏は語った。「知覚しない、言葉を思い浮かべない、ウーンって言ってやる坐禅は、その道のプロフェッショナルがとる方法。わざわざ難しい方法でやってるんですね。映像か、もしくは音を使って、初めからそれに身を委ねてしまえば、初心者でも言葉はすぐに浮かばなくなる。三昧の状態が体感できるんです」。
そうした方法のひとつにイメージ呼吸がある。「私がおすすめしたいのは、吸い込んだ息が、たとえば手先まで運ばれてきているというイメージを持つ呼吸法。意識をそこまで動かしてやれば、自然と手先が温かくなるのを感じるはずです。これ、不思議なことで、実際にそこまで酸素が来てるとしか思えない。」吸い込む息を映像として具体的にイメージしながら呼吸する。それが玄侑氏の言うイメージ呼吸なのだ。
「意識と身体は一緒になりたいものなんです。だから、意識をどう動かすかっていうのは非常に重大。呼吸をするときは、実際にある身体の輪郭よりももっと大きい身体をイメージして下さい。少なくとも両手が届くぐらいの範囲。その大きな身体の輪郭の外側にある空気を、まずは脳天から吸い込むようイメージして下さい。吸い込んだ息は、臍下三寸ぐらいのところ、その一点に収める。意識っていうのは一点に持っていかないと効率的に集中できませんから、このあたりではなく、この一点です。そして、その息が地に抜けていくイメージで吐き出します。天から入って、臍下の一点に入って、そうして大地に抜けていくイメージ。次の呼吸は大地から。大地から吸いあげて臍下の一点にいったん入って、脳天に抜けていくイメージ。最後は天と地、両方から入ってきて、臍下一点に収まる。そうして、その息が全方向に発散されていくというイメージで呼吸してみましょう。そうした呼吸を繰り返すことで、言葉を必要としない三昧の状態を作り出すことができるのです。だから言葉に置き換えてはだめ。映像的なイメージを抱かないと。瞬間ごとの映像に意識を集中し続けるわけです」。
玄侑氏がすすめてくれたもうひとつの方法が、般若心経の読経だ。「三昧の状態を音の力を使って作り出すのが読経。この場合は暗記してないとだめですけど。文字を見ながらでは、やっぱり言語脳が働いてしまい、脳波もベータ波になる。暗記してしまっているものを再生している状態はほとんど完全にアルファ波になるんです。般若心経は覚えるのにちょうどいい長さ。タイトルを除いて262文字です。ゆっくり読んでも7分ぐらいでしょうか。覚えて慣れてきたら、今度は般若心経を読んでいる間に息継ぎを2回とか、呼吸数も決めて秒読みに挑戦するわけです」。般若心経を唱えることで三昧の状態を作るのだ。「なぜなら、自分の声にこれほど耳を傾けてる状態はないですから。うっかり考えると必ず間違える、これは間違いのないこと。物を考えない時間をわざわざ作ろうというときに、お経ほど便利なものはないんです」。