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06 8月23日(OCTOBER 2006)「美的 BITEKI」小学館
写真=山路勝己 インタビュー・文=もりたじゅんこ


kokyu
呼吸で取り入れる酸素は、私たちの命に、
必要不可欠なエネルギーの源。
肌のキレイ、体の元気のもとであるのは
もちろんですが、さらに「呼吸」には、
脳を落ち着け、心を磨くなどさまざまな効果があります!

呼吸美容道.....1
ストレスに打ち勝つ脳内物質も分泌!
東洋の伝統に培われた「吐く息」が脳や心に効くワケを、まずはお勉強
「禅」の呼吸で健やかな心身を育てる

「調身・調息・調心」という言葉があるように古くから東洋では、“息”を調えることが、“身や心”を調える、という考えがある。その代表格である「禅」は、特に吐く息の効用を説いている。また、科学の視点からも「息」が心に効く理由を、徹底検証!
吸って、吐く―。
生まれたときから当たり前にしている「呼吸」をもっと意識して内側からキレイを磨く!

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「調息・調心」―息ヲ調ヘレバ心モ調フ―
目には見えない「心」にアプローチする、古来伝わる「息」の法
「禅」の呼吸 ―日常生活への取り入れ方
煩悩や迷いにとらわれず、穏やかで豊かな心で生きたいbar
目には見えない「心」を調え、コントロールする方法として
「息」が有効である、と既に古人は、気づいていた。
「禅」を知らない初心者にも、今すぐ取り入れられるエッセンスを、玄侑宗久さんに伺いました。


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ゆっくり息を吐き、脱力。それが禅の第一歩

 禅、というと、静かなお堂にじっと坐し、身じろぎひとつせずに過ごすもの、もしほんの少しでも気を抜こうものなら、後ろから長い棒でバシーンと肩を打たれる……、そんな、厳かで苦痛を伴う“修行”をイメージしてしまいがち。
 ところが臨済宗僧侶で作家の玄侑宗久さんによれば、本来、禅は脱力してリラックスできるもの。特に、初心者が初めて坐禅を行うときは、正しいポーズや瞑想法うんぬんといった薀蓄(うんちく)を頭に入れて実践するのではなく、ただただ呼吸に意識を集め、そのときの体の様子を感じてほしい。そうすれば、まずは気持ちよさを感じられるはず、とのこと。“呼吸を意識するだけで、心や体が、こんな風に変化していくんだ”といった面白い発見があるから、と。
「体の力をフッと抜いてリラックスしてみてください。そのとき、自然に息を吐きますよね。逆に、さあ集中しよう、と思うと、息を吸います。もっと集中したときには、息が止まってしまう。無意識のうちに、私たちは心と呼吸を連動させているものなんです。
 日常生活の中では、私たちはつい息を詰めて、短く浅い呼吸になってしまいがちです。だから、呼吸をわざわざ意識するときには、その逆を行って、リラックスする状態を増やせばいい。つまり息を“ゆっくり深く吐く”。それが坐禅の基本なのです。ふだんの生活では、だいたい5秒に1回くらいの呼吸リズムになっているのではないでしょうか? それを、15秒くらいを目安に長くしてみる。これなら、誰にでもすぐにできます。慣れてくると、腹筋がじわじわと鍛えられて、横隔膜も自由に動くようになるから、さらに長く息を吐けるようになりますよ。私の場合、1分間で2回以下、つまり30秒以上、息を吐いてますね」

息の動きを追って意識を動かしてみる

 とはいえ、“目指せ15秒、次は16秒!”と秒数ばかりに気をとられるのはナンセンス。苦しい作業となってしまい、リラックスとは程遠くなる。
「ムキにならなくていいんです。“深くゆっくり吐こう”と意識していれば、だんだん長くなっていきますから。自分の意志で長くするというより、自然と息そのものが変化してくる、という感じですね。むしろ、集中してほしいのは、“今、息がどこを通っているか”と逐一感じることです。“おなかまで入った息が背骨を伝わって上っていく、のどを越えて頭頂まで来たら今度は肩から手のほうへ・・・”と、息の動きを追いかけて、意識を沿わせていくのです」
 玄侑さんは、それを「物事の本当の在り方に寄り添う」と表現する。
「人間は、物事を目の前にして、つい頭を使って括ってしまうんです。例えば雨が降っているとき、地に落ちるひとつひとつの音を聞く、なんてことはしませんよね。雨が降る様子を全体として見て判断して、“しとしと降っているな”、“どしゃ降りだ”といった言語に置き換えてしまうんです。呼吸も同じで、“15秒吐いて、ハイ吸ってー”と数をカウントしているうちは、頭がそちらに行ってしまいます。そうではなく、微細に息の動きそのものを追いかける、意識はただそれを感じる、ということに没頭してほしいのです」
 そうすると、からだの中で微妙な変化が起こってくる。
「漢方では“気血”といいますけれど、意識(気)を動かすと、血液もそこに集まってくるんです。血が集まれば、毛細血管が広がって重くなります。意識だけでも血は動くのですが、呼吸と同時にすることで、ものすごく効果的になります。それは確かです。
 たとえば、体が1本の木になったとイメージしてみます。根っこの部分、つまり足よりもっと下の地面のほうにまで、息を送って意識もそこに置く。そうすると、体がズーンと重くなるんです。逆に、天に伸びる枝(頭上)に向かって、息を送ってみてください。ふわっと体が浮くような感じがします。試しに、誰かに体を横から押してもらってください。根を張ったときはビクともせず、逆に天に向かっているときは軽い力でもよろけてしまう。はっきりと違いが出ます。不思議ですよ。“毛細血管よ、開け”と念じたところで、そのイメージを体に伝えることは難しいのですが、息と同時に意識を動かせば、からだの状態が変わるのが、はっきりとわかるんです」

イメージを駆使し、全身で呼吸する

 初めて坐禅に取り組む人にとって、根っこ(足元)から枝先(頭上)にまで、息を動かすのは難しいかもしれない。そんなときも、イメージ力が役に立つ。
「自分の体を、からっぽなひとつの容器とみなすんです。息を吸うと、足元から水が上がってくる。頭上までいったら、今度は息を吐き、喫水線が徐々に下がってくる。不思議なことに、無理に吐こうと思わなくても、喫水線が体の途中にあれば、さらに吐けてしまうんです。実際には、空気は口から肺にかけて、出入りするだけです。でも、イメージを全身に広げることで、呼吸は確実に変わる。いわゆる※外呼吸だけでなく※内呼吸も意識下に置くわけですね。私はそれを『全身呼吸』と呼んでいます。

息を意識が追いかける。そうすると血も、集まってくるのです。
毛細血管が広がり、体が温かくなります。


※外呼吸=体の外から入れた酸素を二酸化炭素と交換する、肺呼吸のこと。
※内呼吸=血液中に取り込んだ酸素を各細胞に送り、ガス交換する、全身呼吸のこと。

臨済宗妙心寺派、福聚寺副住職。作家。
慶応義塾大学卒業後、さまざまな仕事を経て現職に。
2001年『中陰の花』(文春文庫)で第125回芥川賞受賞。
9月7日に『現代語訳 般若心経』(ちくま新書)を上梓予定。
biteki

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