ここ数年、書店でも禅に関する本を数多く見かけるようになりました。禅は今までも、日本人の心のあり方に大きな影響を与えてきましたが、今回は第3回目のブームと言えるのではないかと思います。
第1次ブームは鎌倉時代で、当時の禅は武士の死生観を形づくっていくものでした。これが武士道の始まりですね。
第2次ブームは室町時代の末期で、禅は華道や茶道、能狂言といった文化の骨格として広がっていきました。まだ上層の武士や公家のものではありましたが、ある意味で民衆化した時期と言ってもいいかもしれません。
そして、私が第3次ブームと呼んでいる今日、禅は治療としての役割を担っているような気がします。
現代社会では、うつ病など人間関係の中で生じる病が多いといわれますよね。そんな中、あまりにもぶれてしまった人間の在り方を修正する力が、禅の中にあるのだと、私たちは気付きはじめたのではないでしょうか。
明治時代以降、日本人は西洋から近代的な合理主義を取り入れてきました。知識をどんどん増やす、分析的な知性を磨く、学校でいい成績を取る。それらを「良し」としてきた大きな流れが、ここのところ大きく破綻しているわけですよね。
それを反省するときに、一つの方向性として、私たちは禅の中に「もう一つの知」というものを見いだしているのではないでしょうか。「もう一つの知」を簡単な言葉で表現すると、それは「無心になったときに、すべてが直観的に把握できる」ということです。それはある意味で、武士道とも重なるものだと思います。 |