書評『脳と魂』

「ダ・ヴィンチ」メディアファクトリー 2005年3月5日 4月号

ダ・ヴィンチBook Watcherの
dvi

あらゆるジャンルの新刊本から、目利きのBook Watchers10人が選りすぐりの20册を紹介。
気になる本を探しておトクな読書をしてください。
一志 治夫氏(いっしはるお)●ノンフィクションライター
昨年は『魂の森を行け』(集英社インターナショナル)、『小沢征爾サイトウ・キネン・オーケストラ 欧州を行く』(小学館)、『豆腐道 嵯峨豆腐「森嘉」五代目森井源二』(新潮社)の3册を刊行。「今年も数冊は出す予定です」

エトセトラ/対談
日本と日本人の変容を 僧侶と解剖学者が語り尽くした
 賢者たちは、もう何年も前から口をそろえて、明治以降の日本の迷走に警鐘を鳴らし続けている。どうやら、近代化が始まって百数十年がたち、結論は出たようだ。私たちの歩いてきた道は、間違っていた、と。しかし、問題は、その近代化のツケにいまだ気がつかない人たちが存外に多いことである。賢者たちは、だから、苛立ち、発言し、絶望する。本書もまた、僧侶と解剖学の碩学である賢者が日本の歩みと日本人の行く末を案じ、何が間違っているのか、どこにターニングポイントがあったのか、を互いに触発し合いながら論じていく対談集である。
 スポーツ、西洋と東洋、宗教、都市、自然、教育といった一見ばらばらなテーマが複合的に語られていくのだが、それらの解決の一つのキーワードとして「江戸時代」があることは間違いない。実際、たびたび江戸時代の素晴らしさに言葉は及ぶ。「だから僕は最近、今の日本の言葉を全部江戸時代の言葉にしたらどうかと思うんだよ。大学の評議会と評議員、あれは『年寄』って言えばいいんだ(笑)。社長って言わないで『親分』とかですね。代々続いている企業だったら『宗家』とかね。そういうふうに全部言い換える」(養老)。「それで教育の自転車操業が始まっちゃった。それ遡ったら、やっぱり明治に行っちゃうんだ。遠因は明治にありますよね、徳川三〇〇年やったことをみんななくしちゃったんだから」(養老)。2人の博識と見識に驚きつつ、読み終わる頃には背筋がぴんと伸びていることに気づく。
[読得指数]知識:★★★★★刺激:★★★★★希望:★★★
[読得指数]=この本を読んで味わえる気分を★1〜5で評価
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「望星」(ぼうせい)2005年3月1日 4月号 発行・東海教育研究所 発売・東海大学出版会
文/麻生 タオ
books

話題の二人による対談集
noutama
『脳と魂』
養老孟司+玄侑宗久
筑摩書房
1,680 円(税込)
 「我思う、故に我在り」というのは、まさに首から上だけで世界を捉えようとしてきた近代を象徴していると思う。しかしそれだけでは間尺に合わなくなってきた、説明つかなくなってきた、というのが、このところの時代の流れで、本書をひとことで言えば、そういう近代的物言いではいまのところ説明のつかないことについて、人間のアタマの限界を「バカの壁」と称して説いた脳科学者と、霊だの死後の世界だのといったこれこそ近代的論理では割り切れない物語で芥川賞を受賞した禅僧が語り合ったものbarと、ちっとも紹介になっていないか(笑い)。
 対談の話題はアタマではなくカラダ、昨今流行りの身体論から始まるのだが、何かを論理的に突き詰めようというのではないから(というか、論理的に突き詰められない話だから)、話は「あのとき、こんなことがあって、こうだった」というような、ごくごく具体的にならざるを得ない。しかも、突き詰めていこうとしているわけではないから、展開も縦横無尽というより、あっちへ飛び、こっちへ渡り。ひとつの話が次の話を呼び、間(あい)の手で入れた茶々から話題がまた転換していく。その展開の流れが目次の「観念と身体」「都市と自然」「世間と個人」そして「脳と魂」という順なのだろう。
 いわば、大いなる雑談と言っていいと思うが、養老先生が博覧強記なのはよく知られているけれど、玄侑氏も負けてはいないから、その雑談の中身がとても濃い。教養のない身には何のことだかわからない話も多かったが、次から次へと展開する話のスピードに乗せられて、ついに読破してしまった。
 オルタナティブなものの見方・考え方に興味・関心のある人には、とてもエキサイティングな対談だと思うbarと、やっぱり紹介になっていないな。
THE BOSEI Vol.38 No.4 2005 published monthly by Tokai Education Research Institute,Tokyo,Japan.

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